転職サイトやハローワークの求人欄を見ていると、「各種社会保険完備」と言う言葉をよく目にします。
初めて正社員として働く方は「各種社会保険完備」の意味がいまいちよく分かっていないという方も多いでしょう。
そこで今記事では「社会保険とはそもそも何なのか?」「社会保険完備のメリット」「選ぶ会社によって保険料は変わるのか?」「社会保険料を引いた手取り」等について、分かりやすく解説させていただきます。
各種社会保険完備とは?
4つの社会保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
各種社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4種類を指します。
聞きなれない言葉ではありますが、例えば、皆さんが病院に行った場合に清算で支払っている金額が3割という事はご存知でしょう。
では残りの7割は誰が払っているのかというと「健康保険」制度から支払われているのです。
社会保険とは我々の最低限のセイフティーネットです。働いている多くの人が支払い、何かあった際にその受給を受けるという仕組みの事を指します。
健康保険
健康保険は仕事以外でケガや病気をした時に、治療費の補填をする保険です(40歳以降は介護保険もあり)。健康保険加入者へは「健康保険被保険者証」が交付されます。この保険証がある事で病院での治療費が3割になります。
日本国民の義務、というよりも自動加入であり、「正社員の方は健康保険」に、「自営業・フリーター・フリーランスの方は国民健康保険」に加入します。
つまり未就職の場合、すでに国民健康保険に加入していますが、会社へ入社した段階で健康保険へと切り替わります。
健康保険は組合で運営をされており多くの団体があります。
同業種の複数の企業が集まって作られた健康保険組合、または会社独自で作る自社健保(単一健保)の「組合健保」。
中小企業の加入が多い「協会けんぽ」。
そして公務員の「共済健保」です。
つまり入社する会社が、どの健康保険の組合に加入しているかによって、自身が加入する健康保険も変わるのです。(健康保険は本人以外に、扶養しているご家族も一緒に加入できることが他の保険と違う点です。)
そのほか、病気や出産で会社を休まざるを得なくなった際に、療養期間中の生活保障として一定期間の賃金を補填(傷病手当金)したり、一時金(出産育児一時金)を支給するといったような仕組みがあります。
厚生年金保険
現在20歳以上で、無職やフリーター、学生や自営業の方は「国民年金」を支払っています。これは老後の生活扶助の為にあるもので、65歳以上に受け取りができる公的年金です。
この年金は働き方によって加入する年金が異なります。
会社勤めの正社員が加入する公的年金は、厚生年金と呼ばれ、会社に入社した時点で国民年金から厚生年金に切り替わります。
厚生年金の中には国民年金も含まれているので、定年後支給を受ける際は国民年金に上乗せされる形で老齢年金が支給されるという仕組みです。
このように国民年金に上乗せする構造をしているため年金制度を建物に見立てて、「一階が国民年金、二階が厚生年金」というように表現されることがあります。
さらに、企業年金などの年金を受給できる場合、年金の構造は三階建になることもあります。
そのほか、万が一、障害を負うことがあった際に障害年金を、死亡の際に遺族年金が支給されるという仕組みがあります。
雇用保険
失業した際に、再就職先が見つかるまでの一定期間、失業給付金を受け取るための保険が「雇用保険」です。
働く意思のある人が支給の対象となるのが前提ですが、実際に支給を受けとるためには、基本的に会社都合による失業の場合は6ヶ月間以上、自己都合による失業の場合は12ヶ月間以上雇用保険に入っていることが条件となります。
その他、教育訓練給付等を受けることもできます。
失業保険のデメリット
目次 失業保険とは失業保険とは何か?失業保険の算出方法について失業保険の申請についてメリット以外にも存在する雇用保険についてあまり長い充電は出来ない離職期間が長い場合、ライバルに対して不利になる計画的 ...
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労災保険
仕事中、または通勤途中にケガや病気をした時に、治療費や治療中の賃金を保障する保険が「労災保険」です。
他の3種の保険は一定の割合を従業員の給与が負担する事が多いのに対し、労災保険は全額企業の負担となります。
いくら引かれる?各種社会保険完備の手取り
社会保険については基本給に加え残業代、通勤費、各種手当をまとめた収入から一定の料率で今額が設定されます。収入が高いほど高い「等級」となり、高い料率が適用されます。
健康保険額が5万円であれば、会社が2.5万円、従業員の給与から2.5万円を差し引いて、加入している健康保険組合に納付するのが一般的です。
また、勤務している会社による違いはありませんが、加入をしている健康保険組合においては料率が若干異なっておりますので、そこでの違いは発生します。
社会保険の手取り例 月収20万円の場合
例えば「東京都在住」「26歳」「月収20万円」で、「協会けんぽ(平成30年4月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表・東京)に加入」している方を例にとると「等級」は「17」になります。
等級17は健康保険料が「9900円」、厚生年金が「18300円」です。40歳未満なので、介護保険はありません。
つまり給料20万円から171800円が手取りとなるのです。(※前述したように、健康保険の組合によっても税率は変わりますし、地域などによっても多少変化するので、この数字はあくまで目安と捉えて下さい。)
しかも、社会保険に併せて税金も同様に料率で決められていきます。これが給与が増えても手取りがあまり増えないと言われる理屈なのです。
残念ながら今の日本において医療費は上がり続けておりますので、どの保険組合に加入をしていても健康保険料は結果として上がっていく傾向にあります。
社会保険完備のメリット・デメリット
「各種社会保険完備!」などというたいそうな言葉を聞くと、なんとなく凄そうな印象を受けるとは思いますが、そもそも通常に従業員を雇う段階で社会保険を完備していない会社は大問題です。
短時間勤務(パート、アルバイト)については、「雇用保険」「労災保険」のみの加入で問題がありませんが、フルタイム相当で働く場合において社会保険は最低限の制度です。
国も財源の確保の観点から、企業の監督を厳しくしており、社会保険への未加入が許される時代ではありません。
社会保険完備していない会社
つまり社会保険がない会社は、法律に反しているか、制度が適用されないほど小さい会社ということになります。
法律に反しているのは問題外ですが、社会保険に加入できない小さい会社も、従業員の安心安全に頭が回らない程、資金繰りに余裕がないということですから、会社の将来性は危険な可能性が高いです。
社会保険に加入をしていない場合には労働者が何かあった際に必ず問題になります。
簡単な例ですが、病院に行ったら、当然保険証の提示を求められますよね?保険証が受給をされない会社で働いた場合に、ご家族の扶養に入っておらず、保険証がなければ、病院で10割を負担する事になります。
3,000円で済んだ治療費を10,000円払う事になるのです。そんな企業では働けませんよね?それくらい問題のある企業なのです。
ちなみにもしそのような会社で働く場合は、ご自身で国民健康保険に加入することになりますので、実際に治療費を10000円支払うことはありません。ただ無職の方と同様、毎月の保険代は全額自己負担となります。
求人で社会保険の記載なし
社会保険についての記載がない企業は大きく二つに分かれますが、一つは社会保険完備は当たり前と考えているからです。
一方で本当に完備していない企業も少なからずありますが、これは面接などを通じて必ず確認をとりましょう。
日本の社会保険制度は世界でも類を見ない互助的な制度です。経営者が経費を抑える為に社会保険への加入をしないという事になれば、この制度自体が破綻しかねません。
正社員として働く場合は、最低限各種社会保険完備している会社を選ぶようにしましょう。
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