よく「事務系職種や営業職種の転職活動に有利な資格は?」と尋ねる方がいますが、多くの企業が資格よりも前職での経験を重視するため、あまり拘る必要がないのが実態です。
それよりも企業が大切にしているのは「即戦力」。新卒採用と違い中途採用は即戦力を求める企業が多いのです。
では「即戦力」とは具体的にどういったものなのでしょうか。
今回は、「即戦力と資格について」「資格の3つの種類」「敢えて挙げる狙い目の3つの資格」について、お話しさせていただきます。
企業が即戦力を必要としているわけ
新卒社員は将来を期待されての雇用が多く、これらをポテンシャル採用と言います。育成するのに長い年月を要するのでその分コストもかかります。新卒は将来的な人材とも言い換えられるでしょう。
しかし中小や零細企業では、この将来的な人材を採用し待つほど余裕がありません。コスト的にも厳しく、将来的な人材より今すぐ人材が求められるのです。
ただ始めから経験を積んでいる転職者を採用すれば、コストもあまりかかりません。
企業にとっては低コスト尚且つ最大限の利益を得る事が出来ます。つまり企業にとっては経験者こそが一番理想の人材なのです。そしてこれが資格と即戦力との関係の重要なポイントになります。
資格は即戦力になりうるか
前述の通り、企業は資格に対して重きを置いていません。
資格を一切持っていない者より、資格を保有している者の方が即戦力として期待されるのは当然ですが、ただ単に資格を持ってるだけでは意味がないのです。
資格なしの転職法。資格意味なかったと感じた先輩達
「今よりも働きやすくて、待遇のいい仕事に転職したい」 「でも、ひとつも資格がないけど転職できるのかな?」 編集部私も過去何度か転職しましたが、資格一切なしだったので本当に転職できるのか不 ...
続きを見る
IT系のプログラマーを例にとってみましょう。
「基本情報処理技術者」の試験に合格し、それらの知識を持っているとします。こういった方は一見採用試験においても有利なように見えます。しかし実際には即戦力の人材とはならないのです。
それよりもプログラミング言語をしっかり頭に叩き込み、実際に自分でプログラミングを組めたり仕事で利用した事がある経験者の方が、即戦力という意味では優秀な人材といえます。
即戦力を重視している職種に拘るならば、前職で同じ業務を経験している方が最も有利なのです。例えアルバイト経験しか実務経験がなくても、一通りのことが出来るならば十分即戦力と考えられます。
業務独占資格じゃないもの程この傾向が強く、新卒なら資格のみでも効果はありますが、中途採用は経験値や実際に働く事が出来るかが一番重要です。
もし資格は必要でなく経験が大事な業界であれば、勉強する時間をアルバイトや派遣等、経験を積む時間に充てる方が懸命です。もちろん一番の理想は、資格もあり実務もある事なのは言うまでもありません。
もちろん実務経験があるからといって「即戦力人材!即採用!」となる訳ではありません。その経験をいかに生かせるかをアピールする力が問われます。
経験や実践力が大事。しかし資格が有利に動く事もある
ただし資格の中にも、時に実務経験より有利な効果をもたらす資格が存在します。極端な例を挙げれば不動産業界の宅地建物取引主任者でしょう。
宅地建物取引主任者の資格は、従業員の人数に対して一定数必要と法律で定められています。もし人数が足りないと問題になりますので、働いている従業員に取得を促す会社もあります。
つまり予め資格を保有している人材を雇用すれば、資格保有者の数を1人分増やせるので企業にとってとても助かるのです。
こういった業界では資格所得が採用試験時に重宝され、生きた資格となるのです。業界によって資格が必ずしも有利になるとは限りません。
闇雲に資格を目指し時間を消費する前に、まず自分が目指す業界ではどういった人材が求められているのかを知る事が必要です。
狙い目の資格とは?資格の種類3ステップ
「狙い目の資格」というと、一般的には簿記やFPなどの「汎用性のある資格」が多く挙げられます。どのような業界、職種でも総じて必要とされる、という意味では上記二つの資格は「鉄板」であると言えます。
しかし逆に上記のような「誰もが持っている資格」は最低限と捉えられることも多く、実務経験が無いと特に転職時においてはあまり強みにはなりません。
ですから資格については「自分が企業からどのように必要とされたいか」「どのように貢献したいか」という観点から考えてみることも重要です。
「自ら提案し運営したい(経営に携わりたい)」のか、「営業として稼ぎたい」のか「専門知識を身に付けて、企業をサポートしたい」のか・・・その志向によっても大きく異なってきます。
取得すべき資格の種類には3ステップがあります。
必要資格
まず一つ目は「必須資格」。
社会人として、またその企業の社員として基礎レベルとなる(必ず必要とされる)資格を指します。例えば、あなたが運送会社の社員と仮定すると、必須資格は「運転免許」です。
運転できなければ仕事にはなりませんから、これは明白ですよね。
専門資格
そして二つ目に「専門資格」です。
この場合の専門資格は「大型免許」や「特殊車両免許」です。業務の専門性を高める資格、という意味での専門資格です。
専門外資格
そして最後に「専門外資格」です。
例えば「簿記」などの資格を取得すれば、その会社の経営にまで関わることが出来るようになります。業務の幅が広がり、社内でのランクアップに活かせる資格と言えるでしょう。
理系の学生が国語も得意だと入試に優位であるように、営業部門でありながら管理部門の知識(財務等)を持ち合わせている、というような幅広い知識があると、提案にも一層説得力が増します。
入社時にはまず「必須資格」を取得し、個人で業務遂行が出来るようになり、そして次に「専門資格」で業務の専門性を高め、その上で「専門外資格」を取得することでランクアップや業務の幅を広げる・・・これが理想的な資格の取得パターンでしょう。
ただし具体的な資格内容は企業、職種によって異なります。
例えば「事務職として営業マンのサポートをしたい」(営業事務)のであれば、「必須資格」は「簿記」や「FP」です。まずは3級から取得しましょう。
そして「専門資格」としては「簿記」や「FP」の2~1級のほか、「MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)」や「秘書検定」2級以上、「TOEIC」550点以上などが挙げられます。
最後に「専門外資格」としては「宅地建物取引主任者」(いわゆる「宅建」ですね)や「販売士」、「中小企業診断士」など本来営業マンが「専門資格」として取得する資格が挙げられます。
つまり、営業の目線でサポートできる(ひとつ上の視点で業務が遂行できる)ようになるための資格のことを指します。
皆さんにとっての資格の3ステップは何に当たるか、そして今現在皆さんはそのうちどのステップの資格を取得しているのか、考えてみてはいかがでしょうか。
IT技術の発展に伴い、現在人間の担っている仕事が自動化され、仕事が減るということが危惧されています。
そのような状況下にあっても、社内で常に必要とされる技術(資格)を持つことは、自動化することのできないその人の社内における「アイデンティティ」となるでしょう。
敢えて挙げる、転職活動に有利な3つの資格とは
求職者の方にここまでお話ししても転職活動に有利な資格を訪ねる方は絶えません。
そんな方々のために敢えて挙げるとするならば、“普通自動車運転免許”“日商簿記3級以上”“TOEIC 700点以上”の3つが有利になることも付け加えさせていただきます。
営業担当志望であれば“普通自動車運転免許”は有利
都内近郊であれば電車等の公共の交通機関が発達しているため、営業担当者が社用車で顧客訪問を行うことも少なくなりました。
ただし企業や場所によっては、地方だけでなく都内近郊でも社用車を使用しているため、営業担当者の全員が全員とは言えません。したがい営業担当志望であれば、“普通自動車運転免許”の保持は有利に働くケースがあるのです。
免許の保持が必須としている企業でなければ、免許の有無が要因で採用試験に落ちることはまずありませんが、それでも取得済みであれば履歴書にはっきりと記載しておいた方が良いでしょう。
また国内では社用車の運転可能性は0であっても、アメリカなどの海外での駐在先では運転必須となる可能性がありますので、自動車の運転は可能という点をアピールするためにも、営業担当志望であれば可能なら取得しておきたい資格の一つです。
就活に運転免許は必要か
目次 前回までのあらすじ運転免許取得就職における運転免許証の必要性と職種ATとMTアルバイトをしながら運転免許取得木下・井上の就活比較前回までのあらすじ 井上 28歳中卒無職。 中学卒業後から音楽に明 ...
続きを見る
事務系職種希望であれば“日商簿記3級以上”はビジネスの基礎
事務系職種であれば“日商簿記3級以上”の知識は非常に重宝されます。
銀行をはじめとする金融系はもちろんのこと、商社や他業界の経理・財務系の職種でもそうです。実際、私は前職の商社に勤める際、企業より“日商簿記3級以上”を入社までに取得することを必須事項として通達されました。
そして入社後私は営業担当となったため、経理でもあるまいし簿記は役立つのかと疑問を抱いていたのですが、実際働いてみると、日々の業務は簿記の理解が必須だったのです。
顧客からの売上げ回収確認、与信判断をするための財務諸表分析など、あらゆる場面で簿記の知識が必要となり、簿記に対する理解がなければ仕事が回らないといっても過言ではありませんでした。
このように“日商簿記3級以上”はビジネスの基礎であり、保有しているのであればその能力をPRするためにも是非履歴書に記載すべき資格の一つです。
英語を使用する企業を目指すなら“TOEIC 700 点以上”の資格を
海外進出を進める企業は年々増してきており、英語力強化を全社的にバックアップしている企業もあるほどです。
そのためそのような企業にとって英語力は非常に重要な能力であり、即戦力としての活躍を期待する転職者に対してもその能力の保持を求めているほどです。
したがい自身の英語力をPRするためにも、“TOEIC 700点以上”の資格があるのであれば是非履歴書に書くべきです。世間一般的な考え方として、700点以上のスコアがあれば日常業務において英語の使用可能というものがあるため有利に働くでしょう。
もちろん誤解しないで頂きたいのは、いくら点数が良くても実践できなければ意味がありませんので、TOEICのスコアがたまたま高得点だったのであればスコアの数字だけで有頂天になるのはやめましょう。仮にそのような状況で英語面接が行われた場合、スコアと実際のレベルとを比較されて相手に不信感を与えてしまうからです。
「資格」について考えることは、皆さん自身の企業や社会における「存在価値」、「存在意義」を考えることにもつながります。ぜひご自身で今一度考えてみてください。
いかがでしたでしょうか。今回のお話が皆さんの資格取得の一助になれば幸いです。