正社員の求人を見て応募したのに、いざ入社してみると「準社員」という身分での採用だったという方は多いです。
「準社員」というよくわからない制度に不安を抱く方も多いでしょう。
そこでここでは、準社員は「どのような働き方なのか」「待遇や労働環境」「メリット・デメリット」について解説させていただきます。
「準社員制度」とは、どのような雇用形態か
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、準社員は雇用形態の1つ。
企業によって呼び方や待遇は変化しますが、多くの企業で導入されている制度であり、一般的には「正社員と同等の待遇で有期雇用契約した社員」と思っていただいてよいです。
別の言い方をすれば「正社員と同等のパフォーマンスを期待されて採用された社員」の「研修期間の雇用名称」、いわゆる「正社員雇用前の見習い期間」を指すものです。
注意ポイント
ただし企業によって待遇や意味合いはまったく異なります。労働基準法でも「準社員」を定義する法律はありません。
正社員以外の社員を全て「準社員」と呼ぶ企業もあります。とても曖昧ですが、この「準社員」という身分制度を独自のルールで活用している企業が存在するのが現状です。それを踏まえて、一般的な「準社員」制度について述べていきます。
企業側から見た準社員は都合がいい
誰しも入社する会社に関して、ある程度下調べをすると思います。
しかし実際に入社し、同僚達と一緒に働いてみないことには、その会社の人間関係であったり社内の雰囲気は掴めません。当然、入社してから自分の肌に合わない会社だったということもあり得ることです。
これは企業側から見ても同様です。
採用する社員をうまく活躍できるか、他の社員とうまくやっていけるか、新人に対する不安材料は多いのです。
そんな時の為に、企業は「準社員制度」を活用します。
先ずは有期雇用契約を締結し、いわゆる研修期間という位置付けて働いてもらいます。もし万が一思うようなパフォーマンスを発揮できない場合は、そこで契約更新をせず雇用契約を終了させる、もしくは様子見として有期雇用契約を更新を選択します。
もちろん、企業側が期待している通りの活躍がみられたら、契約期間満了時に新たに正社員雇用契約を締結します。
正社員だと企業側としてはただ成績が悪いという理由だけでは、雇用契約をやめることはできません。
それこそ就業規則に反する重大な過失がない限りは、会社都合での退職扱いとなってしまい、助成金などの支給が受けられないだけでなく、対外的にも悪いイメージが残ります。
なので大抵の企業ではこのように新入社員を見極める期間を設けているのです。
契約社員・アルバイト・パートとの違い
「契約社員」「パート・アルバイト」と「準社員」の違いがよく分からないかもしれませんが、法的には明確な決まりはありません。
ただ一般的には、「準社員」と他の有期雇用契約の違いは、前述の通り、「正社員候補かどうか」が主な線引きになってきます。
「準社員」である以上、正社員と同等の成果を求める代わりに、正社員と同等の待遇で雇用するので、いわゆるパートやアルバイト、契約社員とは求める成果が異なります。
例えば、パートやアルバイト社員は、ある決まった工程での作業を繰り返し行ってもらう、ワーカーとして期待し採用しているのに対し、「準社員」は、そのパートやアルバイト社員を指導管理する正社員としての能力を期待されて採用されている、というケースがあります。
また契約社員は、ある一定期間労働してもらい、具体的な成果が見られないようであれば契約終了となります。
「準社員」と同じく成果次第によって契約更新か否かを企業が選択する形となりますが、「準社員」のように正社員登用を前提とした採用方法ではなく、良い人がいたら正社員に登用する、または社内試験を設けて合格したら正社員登用という形をとっており、正社員登用を目的とした雇用形態ではないことが多いです。
これらに対して「準社員」というのは正社員雇用を前提としているので、正社員に相応しい人材かどうかを見られています。契約社員やアルバイトに比べ求められる内容がやや重めなのでしっかりと将来を見据えて業務をこなしましょう。
当然、待遇面も異なり、「準社員」は正社員同様、退職金や賞与支給対象となりえます。ただし、企業によりその待遇は異なりますので、必ず準社員と正社員の待遇の違いについては明確に把握しておく必要があります。
要するに試用期間のこと?試用期間と準社員の違い
「正社員候補として正社員同等の働き」をするって、要するに「試用期間」のこと?と考えるかもしれませんが、「試用期間」→「準社員」を経て、「正社員」になるという企業もあるので、必ずしも「準社員=試用期間」というわけではありません。
働き方としては似ていますし、そのように考える企業もありますが、基本的には別物と考えましょう。
準社員の待遇・労働環境について
ではここからは「準社員」の労働環境・待遇について見ていきましょう。
給与は月給ではなく時給とする企業も多い
「準社員」のあいだ、給与の計算式が固定給の月給ではなく、時給計算している企業も多くあります。
これは建前はどうあれ、正社員と違いきちんと長く働けるか未知数なため、働いた分だけ給与を支払うということにしています。準社員の他にも、パート社員など有期雇用契約の雇用形態をとっている場合は、全て時給計算と考えてよいでしょう。
準社員のボーナス
賞与については、「準社員」も「正社員」も、成果次第によって支給額が変動することはあれ、支給対象となることが多いです。
ただし、企業によって支給条件が違うので、準社員の身分でも支給対象となるかどうかは、やはり会社に確認が必要です。
また、企業によっては賞与支給額を決める評価査定期間を設けており、入社するタイミングによっては支給を逃すこともあるので気をつけましょう。
労働時間は正社員と同じだが、残業なしのケースが多くウエイトは軽い
「準社員」の労働時間については、正社員と同じ時間帯での勤務になるケースがほとんどです。
なお時間外労働、いわゆる残業については、「準社員」の身分ではさせない場合が多いです。
最初から深残業をしているようでは、せっかく入社した社員も不安になってしまいますから、いきなりハードな業務量を与えないように調整している企業が多く、「準社員」は正社員よりウエイトが軽いケースが多いです。
福利厚生・有給休暇もあり
その他、福利厚生や有給休暇などについても、正社員と同様、支給対象となるのが大半です。
特別有給と呼ばれる会社独自の休暇制度を制定している企業もあり、例としてハネムーン休暇などもあります。この辺りも「準社員」がその休暇制度の対象かどうかは、事前に確認しておきましょう。
ちなみに有給休暇は法令に順じ6ヶ月以降に10日間の付与、育児休暇、介護休暇などは社員の身分に関わらず取得は可能ですが、入社後1年未満の方や、近々退職が決まっている方は取得ができないように規程されているので注意しましょう。
「準社員」と「正社員」では待遇面、福利厚生に大きな違いが無いケースが一般的ですが、やはり会社によって決まりは様々です。
労働契約書の締結時に「労働条件」「福利厚生」についての説明がある筈なので、労働契約書にサインをする前に、自分が納得するまで福利厚生や待遇面について確認をしましょう。
基本給はもちろん、時間外手当(残業手当)や残業見合手当などの諸手当の支給条件も確認したほうが良いです。
準社員で働くメリットとデメリットについて
準社員のメリット
準社員のメリット
- 正社員前提の雇用であること
- 正社員同等の待遇でありながらウエイトは軽い
- 残業がないことが多い
- アフター5の充実
- 転勤がない
「準社員」は正社員に最も近い雇用形態といっても過言ではありません。なので、「準社員」である最大のメリットは、ゆくゆくは正社員登用され安定した雇用条件下で働けることでしょう。
また「準社員」という肩書きは、いってしまえば正社員手前の段階。
考え方によっては、「準社員は正社員と同等の待遇を受けながら、新人である特権を授受できる」というメリットもあります。
例えば「労働時間」です。
正社員と違い残業を免除されるケースもありますので、アフターの予定も立てやすく、心身ともにフレッシュな状態で仕事と私生活を両立することができます。
また、正社員と違い転勤対象とならないケースが多く、家族への負担も軽減されます。
責任の重さが正社員より若干低い仕事を任される事が多いために、これらのメリットが挙げられます。
準社員のデメリット
準社員のデメリット
- 時給制の場合がある
- 働いた分しか給料を貰えない
- 正社員同等の待遇を受けれない可能性もある
- 雇用が不安定
反対にデメリットとして挙げられるのは、会社独自の休暇制度を取得できないケースが考えられます。
社歴が浅い、また正規雇用者でなければ受けられない特権を設けている企業も、中にはあるでしょう。
また給与が時給制となっている企業もありますので、急な体調不良やケガなどで働けなくなった場合は欠勤扱いとなり、給与の支給額に影響が出てきます。
合わせて、正社員に登用される条件が「評価次第」など曖昧な部分が多く、会社に対する不信感やフラストレーションがたまりやすいのも「準社員」の特徴といえます。
準社員は正社員へのステップアップ
「準社員」として雇用されたならば、正社員になって活躍する自分をイメージし、先ずは与えられた業務を素直にこなすことです。
そうすると正社員へ登用される可能性は高くなります。ただし、必ず企業には「準社員」という雇用形態の待遇面、福利厚生などを確認するようにしましょう。しっかりしている企業ならば、規程に基づき親切に教えてくれるはずです。
「準社員」という雇用形態をとる企業側の背景として、雇用する人物の能力や人柄へ不安を抱えてのことです。
特に中途入社の場合は新卒入社に比べ「準社員」の雇用期間を長くとっている企業もあります。新卒は1から育てられますが、中途はある程度完成されている人材を活用するうえに新卒より基本給は高めになりますので、雇用するうえでリスクは高くなります。
よって中途入社の場合は「準社員」の期間は長くなるとみてよいでしょう。新卒で1ヶ月~3ヶ月、中途の場合3ヶ月~6ヶ月程度が「準社員」としての期間になるでしょう。
実際、5ヶ月も待たずに退職していく中途入社の社員も多いのが現状です。
そのほとんどは、自己都合退職、つまり自身で会社に見切りをつける形での退職です。「準社員」で働く期間は自分自身も企業を見定める期間として、会社の方針や業績、人間関係に制度などをしっかり確認しましょう。